最大心拍数は、ランニングトレーニングにおいて最も重要な基礎データのひとつです。
自分の最大心拍数を知ることは、「最大心拍数に対する心拍数」に基づいてトレーニングを組み立て、その効果の最大化を図る「心拍トレーニング」の第一歩となります。
この記事では、最大心拍数の計算ツールを提供すると共に、その計算・測定手法を解説し、心拍数を基にした効果的なトレーニング方法を紹介します。さらに、スマートデバイスの活用法も網羅しているので、ぜひ参考にしてください。
最大心拍数・心拍トレーニングとは
最大心拍数とは、運動中に達成可能な心拍数の上限です。これはトレーニングの強度設定や心拍ゾーンの管理に活用されます。
最大心拍数を基に運動時の心拍数の目安を設定し、トレーニングを実施する心拍トレーニングは、ランナーの体力向上や健康維持・ダイエットに有効な手法として注目を集めています。
心肺機能はその人のトレーニング量や体質によって人それぞれです。そのため、トレーニングにおける心拍ゾーンは一般的に、その人の最大心拍数に対する心拍数の比で表され、最大心拍数を知ることでより効果的なトレーニングを行うことが出来るようになります。
例えば、脂肪燃焼・ダイエットを目的とする場合、最大心拍数の40~70%で運動することが推奨されています。一方、持久力や心肺機能を強化したい場合は、70~80%のゾーンが理想的です。最大心拍数を把握することで、効率的かつ安全にトレーニングを行うことが可能なのです。
年齢に基づいた最大心拍数計算ツール
あなたの年齢におけるおおよその最大心拍数は一般的に以下の式によって計算されます。
ここではこの式に基づいた最大心拍数計算ツールを提供します。
年齢を入力して、あなたの最大心拍数を計算しましょう。
あなたの最大心拍数はどの程度でしたか?なお、この計算方法は、あくまでも年齢に対して推定されるおおよその一般的な最大心拍数に過ぎず、実際の最大心拍数は各個人のトレーニング状況や体質によって異なってくることに注意してください。
実際に運動をして最大心拍数を計算する方法
年齢に基づいた最大心拍数の計算では、各個人のトレーニング状況や体質の違いを反映した計算は出来ませんでした。しかし、ここで紹介する実際に運動をして計測する方法を用いれば、あなたの実際の最大心拍数を推定することが出来ます。
ランニング経験が豊富な人の場合
ランニング経験が豊富な人の場合は、フルマラソンのレースペースよりも1キロ当たり1~2割程度速いペースで運動を行うことで、おおよその最大心拍数を知ることが出来ます。
具体的には、以下のような手順で計測を実施します。
- ラン:3分間
マラソンのレースペースよりも1キロ当たり1~2割程度早いペースで走ります。 - レスト:1分間
ウォーキングや軽いジョギングで体を休めます。 - 1と2を交互に3セット繰り返す
「1→2→1→2→1→2」というように、計3セット行います。
以下のツールにあなたのフルマラソンのレースペースを入力することで、あなたのが最大心拍数を計測する際に設定すべきランペースが計算できます。
あなたのフルマラソンのレースペースを選択してください(1キロあたりの分数)。
ランニング経験があまりない人の場合
ランニング経験があまりない人の場合は、以下の方法で適切な測定ペースを確認しながら運動を行い、最大心拍数を計測しましょう。
- まずは、自分の限界に近いペースを把握する
「このペースでは10分間続けて走れない」と感じる程度のペースを基準にしましょう。 - 1のペースで2~3分間走る
設定したペースで2~3分間走ります。 - 1分間休憩する
軽いウォーキングやジョギングで休憩します。 - 2~3を交互に3セット繰り返す
「走る→休む」を計3回繰り返します。
上記のような運動中に到達する最大の心拍数があなたのおおよその最大心拍数と考えられます。
運動中に心拍数を計測する方法
ここまで、最大心拍数の計算方法や、最大心拍数に到達させて最大心拍数を計測する運動方法を紹介してきました。
しかし、心拍数は運動中と休憩中で急激に変化します。よって、運動中にせっかく最大心拍数に到達しても、立ち止まって、手首に指を当て、1分間に何回脈を打っているかを計測するアナログな方法で心拍数を計測した場合、その間にも心拍数は落ち着いてしまい、最大心拍数の計測精度は大幅に下がってしまいます。
そこで、どのように運動中に心拍数を計測すればいいかに関して、いくつかの方法と便利なガジェット、アイテムをご紹介します。
スマートウォッチを活用した心拍数計測
アップルウォッチをはじめとしたスマートウォッチを用いると、心拍数の計測が容易に出来ます。
高級モデルのスマートウォッチでは、比較的高精度の心拍センサーを搭載しています。また、格安モデルでもある程度の目安となる心拍数の計測が可能です。
しかし、これらは以下に紹介する、スポーツウォッチや心拍数計測専用器具に比べると、大幅に計測精度は低くなります。また、スマートウォッチの場合、ランニングアプリなどを用いてもGPS精度が低く、ランニングペースやコースの計測・記録の精度も低くなってしまう欠点もあります。さらに、格安モデルではそもそもGPS機能を搭載しておらず、結局ランニングに行くときに重いスマートフォンも一緒に持って行かなくてはならないことも多いです。
スポーツウォッチを活用した心拍数計測
スポーツに特化したスマートウォッチの一種である「スポーツウォッチ」は、非常に高性能の心拍数測定機能を搭載しています。さらに、普段の運動時などの心拍数データなどから、各メーカーが独自のアルゴリズムを用いて、精度の高い最大心拍数の推定値を自動算出してくれます。
例えば、スポーツウォッチメーカの代表格であるガーミン社が販売しているランニングウォッチのフラッグシップモデルの最新作「Forerunner 965」は、心拍数トレーニングに必要となる、最大心拍数の計測、ランニング中の心拍変動、心拍ゾーンの管理などを容易かつ高精度で計測・管理でき、多くの市民ランナーからプロランナーに愛用されています。また、スマートウォッチとしての機能も非常に豊富で、スマートフォンと連携することで、各種SNSの通知機能やナビなどとしても利用できます。特に、スポーツウォッチでは音楽プレイヤー機能が搭載されていないモデルも多い中、Forerunner 965は音楽プレイヤー機能を搭載しており、これは非常に多くのランナーに選ばれている理由のひとつです。
また、パリオリンピックの日本代表など日本を代表するプロマラソンランナーである大迫傑選手が愛用し、パートナーシップ契約を結んでいるCOROS社(カロス)のスポーツウォッチも、ガーミンよりも低価格帯であるにも関わらず、非常に高性能な心拍測定機能が搭載されているなど、大きな注目を集めています。
こうしたスポーツウォッチは、最大心拍数の計測のみならず、その計測結果に基づいたトレーニング計画、ペース管理なども出来るため、非常に幅広い場面で活躍します。さらに、上記で紹介したようなモデルは、非常に高性能のGPSを搭載していたり、Suicaのお財布機能も搭載しているため、スマートフォン無しの手ぶらでランニングに出かけることが出来るため、非常におすすめです。
専用心拍計を活用した心拍数計測
上記で紹介した最新モデルのスポーツウォッチの心拍計測・最大心拍数推定精度は非常に高いです。しかし、より正確に心拍数を計測する場合、専用心拍計(ハートレートセンサー)を活用するのが良いでしょう。
例えば、ガーミン社が販売する胸周りに装着して心拍数を計測する器具「HRM-Pro Plus」は、極めて高い計測制度を誇ります。
また、ランニングインフルエンサーの三津家貴也さんがランニング時に着用している二の腕に装着するタイプの専用心拍計も、胸周りに装着するタイプよりも若干精度は下がるものの、スマートウォッチやスポーツウォッチよりも高い精度での心拍数計測が可能となります。
心拍数計測機器間の精度の違い
ここまで、いくつかの心拍数計測機器を紹介してきました。では、どの計測方法が最も優れているのでしょうか?その結果は、表1のようになります。
表1:心拍数計測に用いるデバイスと計測精度
機器 | 精度 | 特徴 |
専用心拍計 | 最高 | 胸部装着型が最も精密だが装着感に注意。 |
スポーツウォッチ・ランニングウォッチ | 高 | 心拍トレーニングに特化、高精度計測可能。高精度のGPSも搭載しており、手ぶらでランニングに出掛けられる。 |
スマートウォッチ | 低~中 | 日常使いに最適、多機能だが精度は劣る。GPSを搭載していない場合が多く、スマートフォンも必要となる。 |
表1を見て頂ければわかる通り、やはり専用心拍計が最も高い精度での計測が可能となります。
フルマラソンを3時間以内に完走できる「サブ3」レベルなどで、より高いレベルでのトレーニング、計測精度を求めるランナーは専用心拍計の導入をお勧めします。
その一方で、フルマラソンの完走~4時間以内(「サブ4」)を目指すランナーは、スポーツウォッチ程度の精度があれば十分でしょう。
また、ダイエットや健康維持目的で運動する方、大会などには出ずランニングを楽しむファンランナーの場合は、スマートウォッチでも十分でしょう。
まとめ:最大心拍数の計算・測定方法を知って効果的なトレーニング計画を立てよう
最大心拍数は、ランナーにとってトレーニングを効果的かつ安全に行うための基盤となるデータです。本記事では、最大心拍数の計算方法や、実際に運動を用いて測定する方法を詳しく解説しました。また、心拍数計測に便利なツールの選び方や、心拍ゾーンを活用したトレーニング計画の立て方もご紹介しました。
最大心拍数を把握するメリット
- トレーニングの最適化
- 自分に合った心拍ゾーンを利用することで、目的に応じたトレーニングが可能になります(脂肪燃焼・ダイエット、持久力向上など)。
- 安全性の向上
- 自分の限界を把握することで、オーバートレーニングやケガのリスクを回避できます。
- 効率的な目標達成
- トレーニングを「感覚」ではなく「数値」に基づいて行うことで、より短期間で目標を達成できます。
これから取り組むべきアクション
最大心拍数を活用したトレーニングを始めるために、以下のステップを実行してみましょう:
- 最大心拍数の把握
- 記事内の計算式や「最大心拍数計算ツール」を使って、自分の最大心拍数を算出してください。
- 心拍計測デバイスの導入
- 自分の目標やトレーニングレベルに合ったデバイス(スマートウォッチ、スポーツウォッチ、専用心拍計)を選びましょう。
- トレーニングプランの設計
- 最大心拍数に基づく心拍ゾーンを設定し、目的に応じたトレーニング計画を立てます。
- 継続的なデータの確認
- トレーニング中に心拍数を定期的に確認し、必要に応じて強度やペースを調整してください。
どんなランナーでも心拍数トレーニングが可能
最大心拍数の活用は、初心者から上級者まで、すべてのランナーに有益です。例えば、ダイエット目的のランナーは脂肪燃焼ゾーンを目指し、サブ3やサブ4を目指すランナーは高強度ゾーンで心肺機能を強化することができます。これにより、効果的なトレーニングが可能になり、目標達成が加速します。
スマートなランニングライフを始めよう
最大心拍数を基にしたトレーニングは、感覚に頼る従来の方法から一歩進み、「データに基づいた賢いランニング」を可能にします。心拍数データを活用し、トレーニングを科学的に管理することで、パフォーマンスの向上を実感できるでしょう。
最適なツールを選び、心拍数を活用したトレーニングを始めてみましょう!このアプローチが、あなたの健康目標や記録更新への最短ルートとなります。心拍トレーニングを武器に、理想のランニングライフを実現してください!